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お伊勢さまの御神木がやってきた!

連載 第4回 愛知県犬山市・針綱はりつな神社
令和8年6月11日


 伊勢神宮(正式名称は神宮)では、20年に一度、御社殿と御装束神宝(おんしょうぞくしんぽう)を新たにして大御神にお遷りいただき、神威のより一層の高まりを願う至高の祭典「神宮式年遷宮(じんぐうしきねんせんぐう)」が斎行されています。
 第63回神宮式年遷宮では、令和15年に大御神を新宮(にいみや)にお遷しする遷御(せんぎょ)が行われる予定です。令和7年5月から開始されているその諸祭儀の模様は、季刊誌『皇室』の連載「第63回神宮式年遷宮」で詳しくお伝えしています。
 この連載では誌面で紹介しきれなかった令和7年6月初旬の「御神木の奉迎送(ほうげいそう)」をご紹介。木曽地方で伐り出された新宮ご造営のための御神木が、およそ1週間をかけ、長野、岐阜、愛知、三重の各県下で熱烈な歓迎を受けながら伊勢へと運ばれていった様子をお伝えします。


御神木の奉曳に車山(やま)が繰り出す

 令和7年6月6日の朝、長野県上松町(あげまつまち)を出発した御神木は、午後には愛知県北西部の犬山市に到着しました。木曽川が濃尾平野へと流れ出る場所にあたる犬山は、古くから要衝として栄えた町。室町時代に織田信長の叔父・信康が築いたと伝わる犬山城は、現存最古の木造天守を有する国宝の城で、木曽川の南岸、標高約88メートルの小高い山の上にあります。その城下町には現在も江戸時代の町割りや歴史的建造物が残され、情緒漂う景観は多くの観光客を集めています。

 御神木を追いかけて筆者がやってきたのは、犬山城からまっすぐ南下する城下町のメインストリート・本町(ほんまち)通。法被(はっぴ)姿の人たちが集まり、お祭りの華やいだ雰囲気でいっぱいです。これから御神木の奉曳(ほうえい)が行われるのです。それだけではありません。犬山城下に鎮座する針綱(はりつな)神社の春季祭礼でユネスコ無形文化遺産の「犬山祭」で曳かれる車山(やま)が御神木にお供するのです。氏子域13町内の車山から6両が、御神木のため特別に繰り出されます。

 たくさんの見物客が見守るなか、奉曳がスタート。先頭を進むのは、愛知県神社庁御神木実行委員会より露払いのお役を任された神職さんです。

 決して広くはない本町通を、御神木のトラックの前と後に3両ずつ計6両の車山が進みます。車山も御神木のトラックも人だかりの間を縫うようにして、ゆっくりと通り過ぎていきます。壮麗な車山が御神木を守りながら列をなし、向かう先の山上には犬山城。壮観な光景です。筆者の隣にいたおばあさんは「20年前も御神木を見にきたのよ。今回も見たら、もう思い残すことはないわ」なんて言っています。

 車山3両が通り過ぎると、白法被に伊勢神宮を表す「太一」の鉢巻をつけ、綱を手に御神木を奉曳する人たちがやってきました。彼らが手にする曳き綱は御神木を載せたトラックに繋がっています。トラックの運転席でハンドルを握っているのは今朝、上松を出発するときに話をしてくれたドライバーさんです。すかさず「お疲れさまです!」と声をかけると、こちらを見て「すごい熱気ですね。圧倒されます!」と、笑顔。どうやらじわじわと己の大役を実感しているようです。

針綱神社に到着

 本町通を抜けると、目の前は針綱(はりつな)神社の鳥居があります。鳥居前にもたくさんの人が待ち受けていて、空には報道のヘリコプターが飛んでいます。トラックは鳥居前を右に折れて本殿石段下に用意された奉安所へ向かいます。

 奉安所には清らかな白砂が敷かれ、竹矢来の囲いが組まれています。その中にトラックが納まると、白砂がきれいに掃かれ、竹矢来の扉が閉じられて、注連縄(しめなわ)が掛けられました。

 奉安所脇の石段の上には針綱神社の本殿があり、御神木を見守ります。太古より現在の犬山城天守閣付近に鎮座した針綱神社は、濃尾の総鎮守と伝えられます。創建年は不明ですが1000年以上この犬山の地に鎮座しているそう。主祭神は尾治針名根連命(おわりはりなねむらじのみこと)です。

 御神木をお迎えした後、奉安所前の祭場で奉迎祭が行われました。針綱神社の神職さんが神饌(しんせん)をお供えし、祝詞(のりと)を奏上します。その後、雅楽(ががく)や巫女舞(みこまい)、空手や居合(いあい)の演武も奉納されました。

 一方、御神木のお供を終えた車山6両は、針綱神社脇の城前広場に集結。犬山の車山は、それぞれが趣向を凝らした「からくり」を搭載しています。寺内町の車山ではからくり「淡路嶋」(国生み神話にもとづくお話)が披露されました。糸を操り、人形を巧みに動かすからくりの見事さに、見物の人たちから「おおー」という歓声と拍手が起こります。

 日の長い季節ですが、そろそろ陽も落ちてきました。「帰り山」では車山に乗る子供たちが精一杯の元気な声をあげ、曳く男衆も力を振り絞り、本町通を曳き返していきます。そのさざめきが夕暮れの城下町に響いていました。


(次回に続きます)

[取材・文/中尾千穂]

第3回「木曽から伊勢へ向けて出発」は↓
https://www.nihonbunka.or.jp/manage/information/detail/100876
第2回「護山(もりやま)神社での御神木祭」は↓
https://www.nihonbunka.or.jp/manage/information/detail/100871
第1回「上松町(あげまつまち)での『お木曳(きひき)行事』」は↓
https://www.nihonbunka.or.jp/column/koushitsu/detail/100628

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