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天皇陛下は忙しい?①

皇室Q&A 第1回
令和7年9月5日

皇室についてのさまざまな疑問に答えていくこの連載。第1回目は「天皇陛下はお忙しいのかどうか?」。そんな考えたこともないような?疑問からお答えしていきたいと思います。そして、その答えは、ずばり「YES」です。
 まずは、天皇陛下のご日常はどのようなものなのか、そこから説明していきましょう。
 基本的なルーティンのご公務として「ご執務」があります。これは、基本的に毎週火曜と金曜の午後に、書類に目を通され、署名・押印されることです。
 なんの書類かといいますと、新たに成立した法律や政令、条約などに関する書類です。といいますのも、これらのものは陛下の署名・押印がなければ正式な発効にはならないからです。
 その数はどれくらいになるかといいますと、例えば、平成29年は、なんと約960件でした。その960件すべてに目を通し、署名・押印されているのです。直近の「ご執務」自体の回数は、令和7年の3月から5月の3か月間で24回に及んでいます。先に、毎週火曜と金曜の午後に、その「ご執務」に臨まれると書きましたが、週2回で3か月だと、1か月はほぼ4週ですので、ちょうど24回くらいになる計算になります。
 そうすると、年間のご執務の回数は、3か月で24回平均だとして、それを4倍した96回になります。そこから、1回のご執務で、署名・押印される法律などの平均的な数は、年間の署名・押印数が960件でしたので、10件ということになります。
 ご執務はほとんどが、宮殿の「菊の間」や御所(ごしょ)で行われますが、例えば、先の令和7年の4月11日のご執務は大阪市のリーガロイヤルホテルで行われていました。これは、ちょうどその時、大阪万博の開会式にご臨席のため、両陛下が同府に行かれていたためでした。
 先にも書きましたが、陛下の署名・押印がなければ、法律・政令・条約は正式の発効にはなりません。そこに遅滞があってはならないのです。夏休みなどの例外を除いて、火曜日と金曜日の午前中には閣議が開かれ、決済された書類が内閣から宮内庁に届けられます。そのため、陛下のご執務は火曜と金曜の午後だったのです。そして、陛下が地方ご訪問中は、それらの書類は、内閣府の事務員により夕方までに届けられ、その日のうちに陛下はご宿所などでご執務に取り組まれるというわけなのです。
 少しややこしい話になりますが、この「ご執務」は日本国憲法の第七条に規定されています。そこには、「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事(こくじ)に関する行為を行ふ」とあって、その一番目に掲げられているのが「憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること」とされているのです。これらを「天皇の国事行為」といいます。ちなみに、陛下が海外に行かれている時にはどうなるかというと「国事行為の臨時代行に関する法律」に従い、国事行為が皇太子以下に委任されるのです。最近で言えば、両陛下が7月6日からモンゴルに行かれた際に、その臨時代行を務められたのは秋篠宮皇嗣殿下でした。
いかがでしょう? 法律の文書などにきっちり目を通し、押印される。それが、基本的に毎週2回あるわけです。この他にも陛下のルーティンのご公務はまだまだあります。その詳細について次回以降も触れていくことにいたしましょう。


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