読みもの

連載 方言「知らんけどね」

第14回 伊予弁「むつごい」
令和7年11月27日


第14回 「むつごい」(伊予弁)
 この伊予弁は難しいかもしれませんねー。「むつこい」とも言うようですが、主に食べ物について使われます。

 娘さん「お母さん、この肉じゃが、味見して」
 お母さん「ちょっとむつごいね」

 「むつごい」とは「味が濃い」「あっさりしていない」という意味です。若い人はあまり使わないかもしれません。私も使ったことはないのですが、戦中生まれの両親は、今でも「〇〇の羊羹はむつごい」「今日のカツ丼はちょっとむつごかった」などとよく言っています。でも、正確なニュアンスとしては、ただ「味が濃い」というだけでは足りないんですよね。しつこくて、くどくて、逃げ場がない感じとでもいいましょうか。食べた後ですぐにお茶を飲みたくなるような……。
「油っこい」という意味で使う人もいるようですが、わがやでは天ぷらや揚げ物について使ったことはなかったように思います。
 語源としては、古語の「むつ(=不快、不愉快)」と「ごい(=濃い)」が組み合わさったものという説が有力のようです。
 インターネットで調べたところ、この「むつごい」「むつこい」は四国一帯(特に香川県と愛媛県)、兵庫県、岡山県、広島県、山口県に加え、山形県や新潟県の一部でも使われているようです。中・四国地方から遠く離れた山形県と新潟県でも使われているというのは、興味深いですね。香川県では、人に対しても用いられ、しつこい性格とか、濃い顔つきの人を指すようです。顔の好みはともかく、味でも性格でもしつこいのは嫌われということですね。
文/おかだなおこ

前回はこちら https://www.nihonbunka.or.jp/column/yomimono/detail/100747
ページ上部へ移動