読みもの

第24回「だればり」伊予弁
いつの頃からか「ばり」のつく言葉を耳にするようになりました。「ばりうまい」とか「ばり高い」とか。ラーメンの麵の固さの「ばりかた」もそうですけど、これらは形容詞や副詞の前について、「とても」「すごく」を表しています。
でも今回ご紹介する伊予弁の「ばり」は全然ちがいます。「ばりだれ」ではなく「だればり」。この「ばり」は、「だれ/Who」「どこ/Where」「いつ/When」「なに/What」という疑問詞、英語でいうところの「5W」の後につきます。「疑問詞+ばり」というわけです。ただ5Wの残りの「なんで/Why」にはつきません(「なんでばり」は聞いたことがありません)。その一方で5Wには入っていない「どれ/Which」にはつきます。
では、使い方を見てみましょう。
●「こんなこと、だればりに言えんわ~。ほかの人に言わんといてよ」→「こんなこと、誰にでもいえるわけじゃない(あなただから言うのよ)。ほかの人に言わないでね」という意味になります。
●「これ、どこばりに置いたらいかんよ。大事なもんじゃけんね」→「これは、どこにおいてもいいっていうわけじゃないよ(置く場所を考えなさいね)。大事なものだからね」
●「こんな機会はいつばりない思て、がんばった」→「こんな機会はそうそうないと思って、がんばった」
●「あの人は口がこえとるけん、なにばり持ってても喜んでくれんかも」→「あの人はくちがこえているから、そこらへんの適当なものを持っていっても喜んでくれないかも」
●「あんたは肌が弱いけん、お化粧品もどればりつけたら肌が荒れるよ」→「あなたは肌が弱いんだから、お化粧品も選んでつけないと肌が荒れるよ」
だいたいのニュアンスはつかめたでしょうか。例からもわかるように、「ばり」は否定の文脈で使われるのですが、簡単に言うと、「めったに~ない」と訳せそうです。
上記の文例で言えば、
「こんなこと、めったな人には言えない」
「これ、めったなところにおいてはいけない」
「こんな機会はめったにない」
「めったなものを持って行っても喜んでくれない」
「お化粧品もめったなものをつけてはいけない」
と、ひとまず文意はつながります。でもどこか違うんですよね。「めったに~ない」では、「ばり」の否定の強さと、その否定の裏にある話し手の感情がいまいち伝わらないように思います。実際、インターネットで調べていると、「だればり、なにばりを標準語でなかなかうまく言い換えられない」と書いている嘆きがいくつかありました。方言じゃないと伝わらないニュアンスってありますよね。
文/おかだなおこ
前回は https://www.nihonbunka.or.jp/column/yomimono/detail/100846