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黒ノロ掛けを2階の壁から始めた理由6月22日、2階の裏側の大きな壁の黒ノロ掛けを行うとの連絡を受け、再び蔵造り資料館を訪れました。
11時頃に到着すると、長谷さん、古川さんを入れて計10名の職人さんたちが一斉に黒ノロを塗っていました。古川さん以外は、みなさん、50歳前後のベテランです。
この前の妻壁の時は13時半頃に黒ノロを塗り始めたので、ずいぶん早いペースです。この日はお天気が良かったので、水引きが早かったのでしょうか。11時20分には裏側の2階の壁全体に1度目の黒ノロが塗られていました。
「今日は天気が良く、気温も高いので水引きが早かったんです。白漆喰も3回塗りました」(長谷さん)

この日から3日間かけて、大きな壁を大人数で塗っていくそうです。
「明日は正面側の2階、最終日の明後日は裏側の1階です」(長谷さん)
正面の1階は出入り口があって塗る面積が少ないので、少人数で塗るそうです。
「裏側の1階を最後に持ってきたのは、職人さんたちに、この現場に慣れてほしいからです。左官の仕事は現場ごとに作業工程も違うし、ノロの感じも目指す状態も違うので、先に2階の壁で慣れてもらってから、1階を塗りたいんです。2階は目線から遠いので粗があっても目立たないんですけど、1階は人の目につきやすいので、よりきれいに仕上げる必要がありますから」(長谷さん)

色が揃っても光が揃わない場合がある
お昼休憩を挟み、13時半頃に戻ってくると、既に黒ノロ掛けの2回目が始まっていました。
蔵から少し離れた場所では、古川さんが一人で作業をしていました。明後日使う白漆喰を作っているのです。この前に聞いた通り、石灰にスサのシラユキを加えて水で練り、そこにツノマタの入った石灰を加えてさらに練り、最後に貝灰を加えました。一つの作業が終わるたびに道具をきれいにしているのが印象的でした。


14時頃、3回目の黒ノロが終了した壁を見ると、かなり光っていました。ひとりのベテランさんが懐中電灯で壁を照らしています。聞けば、光りムラがないか確認しているとのこと。
長谷さんが言うには、「色が揃っても光が揃わないという場合があるんです。黒ノロの下は白漆喰の上から白ノロを塗っていますが、この下地の状態によって光り方が変わってくるんです。いくら気を付けていても、場所によって塗りムラがあったり、水引きの具合が違うのでね。色が揃わないのを光りムラと呼んでるんですけど、壁の近くで塗っている時にはなかなか気づきにくいんですよね」
「理想はこんな感じです」と長谷さんが現場の一画に案内してくれました。見ると、白い壁に黒く塗られたところがあります。今回の黒ノロを作った際に、サンプルとして塗ったそうです。
「正面からだとわかりにくいけど、斜めから見るとツヤにあまりムラがないのがわかると思いますよ」

確かに斜めから見ても均一に光っているように思えます。確かにこういうサンプルがあると、言葉で説明するよりもはるかに意志共有しやすいですよね。
今日の夜の汗拭きは、あじま左官工芸から若手がひとり来て、古川さんと2人で行うとのこと。壁が大きいので、一人では手が足りないのだそうです。

次回は蔵の扉の黒ノロ掛けを取材することにしました。
(次回:10月予定 取材・文/岡田尚子)
その18(前回)https://www.nihonbunka.or.jp/manage/information/detail?id=100908