読みもの
たたみ方を覚えるのは大事これまで着物離れがどうしてここまで進んでしまったのかをいろんな視点で考えてみました。
最初から晴れ着を目指すからハードルが上がりすぎる。周りに着ている人がいないので着物を着ると目立って恥ずかしい。頑張って着たのに細かなルールを指摘されて心が折れる。着付けが難しいし、なかなか洗えないので着る前も後も面倒くさい。とにかく着るのも片付けるのも保管するのも難しい!
これくらい面倒くさいことが多いと、確かになかなか着物を着る気にはなりにくいですよね。
でも、安心してください! 今は洗える着物もあります! 木綿の着物(浴衣)なら自宅で洗えます! たたむのは…、うーん、私もたたみ方を覚えるのには苦労しました。毎回YouTubeを見たり、着物本の図解を見ながらたたんでいて、時間がかかるかかる!
でもある日、あれ?これは折り紙と一緒で隅っこをきっちり合わせて左右対称に折っていけばいいんだ!ということに気づいてからは気が楽になったのか、ちゃんとたためるようになりました。難しい、難しいと思い込んでいたのがダメだったみたいです。
着物がたためるようになると、タンスから出して広げてみて、着てみようかな、なんて気にもなりますしね。たたみ方を覚えるのは大事ですよ。
着付けの練習をするのは冬がおすすめ
そして、私が目指したのは晴れ着ではなく、日常着でした。買い物(デパートではなく近所のスーパー)したり、着物でちょっと掃除したり、江戸時代や明治時代の普通の庶民がやっていたような着方をしようと思いました。だから当然、着るのは古着屋さんで買った数百円の小紋やウールの普段着です。
まず家の中で古着のウールの着物を着ました。本を読んだりTVやスマホを見てくつろいだり、あまり大きな動きをせずに、家の中でゆったり過ごすだけです。
着物を着て外出するのは、初心者は人の目が気になります。だから家の中で練習するんです。できれば暑い夏ではなく、涼しくなってくる秋、冬に練習するほうが楽です。それは帯が結べなくても羽織を着てごまかすことができるし、袖にゴムが入って先がすぼまった筒袖(つつそで)のうわっぱりを着ることもできるからです。
うわっぱりのいいところは袖口がすぼまっているので、袂(たもと)が引っ掛からないというところです。
うわっぱりを持っていない人は、ちょっと大胆ですが、アームカバーを使ってもいいでしょう。写真を見てください。

アームカバーは、昔は腕抜きと言って、事務員さんたちが背広やワイシャツの袖が汚れないようにつけていたものですが、今は写真のような黒いものがホームセンターの農業用衣服売り場にあります。また和物を売っている雑貨屋さんには、和風の柄のかわいいアームカバーがおいてある場合もあります。
ジャージより上品な気持ちになれます
着物って、袂がひらひらしてテーブルの上の醤油差しを倒してしまったり、ドアノブに引っかかったりしますよね? 着物に慣れていないときはこれが本当にうっとうしくてすごくイライラしました。
襷(たすき)がけをしたこともあるのですが、あれは二の腕がむき出しになるし(冬は寒い)、けっこう袖にしわが寄るんです。
袖を腕にくるくる巻き付けてからアームカバーをするほうが断然しわになりませんでした。
うわっぱりや割烹着、アームカバーなどを使って、袂がひらひらしないようになると、着物って楽だなー、と思うことが増えました。特に冬はおなかがあったかいし、ジャージでダラダラするよりはちょっと上品な気持ちになれるし、楽しく過ごせました。
着物愛が強い方、伝統を大事になさる方には、こんな邪道なやり方は許せないかもしれません。
でも、ずっと着物から距離を置いていた私が、こういうやり方で着物を身近に感じられたからこそ、今も着物を着続けることができたのだと思います。
初めの一歩は邪道でも、着物の伝統的な着方は後から必ず付いてきます。
今、私は自ら「邪道」だといいましたが、実はこれって着物に全く興味を持てない人を引き付けるための工夫だと思っているのです。面倒くさい、難しい、たくさんのルール覚えられない! そう思っている人に、いやいや、まずは自宅で好きに着てみましょうよ!と誘い込むための工夫だと自分では思っています。
だから着物を着てみたいなと思う方、まずは古着の安い着物を買ってみてください。おばあちゃんの残した地味な普段着があれば、それもぜひ! 家で着て、練習するには最適ですよ!
前回はこちら https://www.nihonbunka.or.jp/column/yomimono/detail/100942
●赤星たみこ/1957年、宮崎県生まれ。千葉県八街市在住の漫画家にしてエッセイスト。映画化、ドラマ化された作品多数。猫と着物と生活の知恵を愛する石鹸ユーザー。
アバンギャルド(Avant-garde)とは、既成概念を打ち破り、前衛的で革新的な表現を追及する芸術スタイルのこと。オバンギャルドは、前衛的で既成概念を打ち破りつつ、長く生きてきたオバサンとしての矜持も併せ持つ生き方のこと。ワタクシ赤星の造語です。
