平成28年7月29日から平成28年10月1日にかけて全3回の「新嘗のこころ~勤労感謝の日から新嘗祭の復興」の講座を行いました。
同講座は、3回に亙る講座と収穫体験を通して、日本文化の根底にある「稲作」と新嘗祭のこころを学び、私たちが忘れかけている稔りの喜びと感謝を体験する講座です。
新嘗祭の事前学習として、当財団会議室において小野善一郎氏(湯島天満宮権禰宜)による「宮中の新嘗祭」(7月29日)、「神宮の新嘗祭」(9月9日)を主題とした講義を行いました。講座の締めくくりとしての第3回講座は、埼玉県熊谷市の古宮神社(茂木貞純宮司)において、収穫体験や新穀感謝祭への奉仕体験などを行いました。
東京・新宿からバスで同神社へと向かうバスの中では小野善一郎氏が食前・食後の感謝の和歌や、大祓詞について解説し、参加者との唱和も行いました。
神社に到着後、境内の集会所で茂木宮司、千葉県香取郡神崎町の酒造会社「寺田本家」の寺田優代表取締役、小野善一郎氏の講義を行いました。
茂木宮司は「神道と米」と題し、祈年祭や新嘗祭等を紹介しつつ稲作と祭りとの密接な関係を説明した上で、「『食べ物』は『給いもの』。食生活がどんなに変わっても、『いただきます』の文化は変わらない」と講義されました。
また、代々千葉・香取神宮の神酒製造に携っている寺田氏は「米と日本酒」と題し、酒造りの前後に神事があることなどを紹介しました。参加者は寺田本家のお酒三種を試飲しながら、寺田氏が披露した寺田本家に伝わる酒仕込歌に聞き入っていました。
最後に小野氏が「新嘗のこころ」と題して、勤労感謝の日が新嘗祭の日であることが知られていない現状を挙げ、祭りや祓の精神等に触れつつ新嘗祭の重要性を語りました。
講義後、参加者は同神社近くの田圃で、「キヌヒカリ」の稲刈りを体験。参加者のほとんどが鎌を手にした経験もなく、慣れない作業に悪戦苦闘する姿もありましたが、不慣れな参加者を手助けしたり、うまく刈れた稲と記念撮影したりするといった光景が見られました。
収穫体験後は再び同神社に戻り、懸税作り・脱穀・籾摺りを体験しながら精米作業の過程などを学びました。特に懸税については、伊勢の神宮の神嘗祭に奉納されるということもあって、規定のものになるやう長さを細かく測るなど、参加者同士で相談しつつ二束を奉製していました。
その後、茂木宮司が斎主を務めて「新穀感謝祭」を斎行。全員で祓詞を斉唱したのち、修祓に続いて今回収穫された稲を参加者1人1人が神前に奉りました。その後、全員で大祓詞を奏上し、茂木宮司が祝詞を奏上。参列者全員が玉串を奉って拝礼しました。
今回の講座について参加者からは、「土の匂いの中で体を動かすのは清々しい」「充実した内容で大人の修学旅行のようでした」「普段食べている物の大本からわかることは凄い」などの感想が聞かれました。また祭典後の直会で挨拶された茂木宮司は、「社会全体が農業に目を向けてほしい。県外から来た人が、こうして関心を持って参加してくれるのはありがたいこと」と語っていました。