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百味ひゃくみ御食おんじき

談山神社・嘉吉祭かきつさいの特殊神饌<3>
令和8年9月15日

 奈良県桜井市・談山神社の「嘉吉祭」で供えられる「百味の御食」は、古式ゆかしい独特の形式をもつ特殊神饌(しんせん)。約30種類からなる神饌は、毎年、神職や氏子さんの奉仕により調製・準備されています。例年、お祭りを前にした10月第2水曜日~金曜日の3日間には、奉仕者一同が社務所に集まり「御供(ごく)盛り」と称する調製が行われます。ここで紹介するのは、令和7年の「御供盛り」の様子です。

果実・野菜・木の実の御供

「百味の御食」には、前回まで紹介した「米御供(こめごく)」のほかにも、秋の実りを独特の形に盛ってつくられる御供があります。御供盛りに奉仕するみなさんが向かう作業台の上には、果実、野菜、木の実などの材料が所狭しと置かれています。


 これらの神饌の材料は、ほとんどが神社が鎮座する多武峰(とうのみね)の集落で育てたものや、自生しているもの。令和7年の夏は気温が高く、物成りが良かったとのこと。木の実などは、8月末ごろから山に入って採取しておいたものです。

 床に広げたビニールシートの上にワサッと置かれているのは、緑色の細長い葉。これは茗荷(ミョウガ)の葉で、御供の芯にします。


 色の良い葉を選んで、麻緒(あさお/麻の紐)でしっかり束ね、15センチくらいの長さに上下を切って、円柱状の芯にします。この芯を串に挿し、神饌の台に立てます。


 茗荷葉の芯に、竹串でさまざまな果実、野菜、木の実を挿していきます。毎年つくられる定番は、栗、零余子(むかご)、椎の実(どんぐり)、榧(かや)の実、枝豆、古代梨、豆柿(ぶどう柿)、姫林檎、すだち、銀杏、棗(なつめ)、椎茸、酸漿(ほおずき)の13種。このほか、その年に持ち寄られた材料を盛った御供も加わります。


 上の写真は、氏子の福本静代さん(右)が棗の御供、関本佳子さん(左)がすだちの御供を盛りつけているところ。下のほうを細く、上のほうをふくらませて形づくるため、太くする部分は竹串の長さを長くして調整します。

 芯が太いと盛りつける実の数が多くなるため、調製に時間がかかります。下の写真の椎の実の御供は、その一例です。

 椎の実の御供を担当した、談山神社の学芸員で巫女の喜多日奈(きた・ひな)さんは、御供盛りに奉仕するのは今年が初めてだそう。「手先の作業は得意なのですが、こだわりすぎて時間がかかってしまいました」と言いますが、びっしりと小さな青い実が並んで、見事な出来ばえです。

 御供盛りの奉仕者のなかには、神職や氏子さん以外の方も。奈良県庁観光局のスタッフ・山裕成(やま・ひろなり)さんと田口智子さんは、令和6年から奉仕しています。

 山さんは、「奈良には長い歴史があり、日本の伝統文化が残っています。奈良の仕事をしている自分も、その担い手になれたらと常々思っていたところ、縁あって御供盛りに奉仕できることになりました。地元の方々といろいろお話ししながら神饌づくりをするのは、とても楽しいです」とのこと。仕事柄、海外からの客人を嘉吉祭に案内することもあるそうで、「外国の方に『百味の御食』を見せると、みなさん驚愕し、感嘆されます」とも話してくれました。

 山さんに誘われて一緒に参加している田口さんは、「貴重な神饌づくりに奉仕させて頂けるなんて、すごいこと。初めて参加したときは、自分が浄化されたような感覚になりました。2回目の今回は、また違う気持ちでやらせてもらっています」と話してくれました。

 今回、新たに考案された御供もあります。氏子の上杉忍さんが手にするその御供は、細長いさつま芋を縦に盛りつけ、ところどころにローゼルの赤い実があしらわれたもの。

「お供えやからな、毎年、新しいものを考える。神様に喜んでもらえるようにな」と上杉さん。身近にある実りを、自分たちも楽しみながら見目麗しく盛りつけ、神様に喜んでいただけるものを差し上げたい――そんな気持ちが、多武峰の人々に受け継がれていることを感じた言葉でした。

「百味の御食」の独創的な神饌は、まだまだ他にも。
次回以降もお楽しみに。


[取材・文/中尾千穂]

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