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百味ひゃくみ御食おんじき

談山神社・嘉吉祭かきつさいの特殊神饌<2>
令和8年9月9日


垂木(たるき)をつくる

 米御供は、円柱形に米粒を盛った本体の上に、花弁のような色どりどりの飾りがついています。これは「垂木」と呼ばれる部材で、餅を小さく切って色をつけたもの。米御供を仕上げる前に、この垂木をつくっておかねばなりません。

 前回お伝えしたとおり、嘉吉祭を前にした10月第2水曜日~金曜日(令和7年は10月8~10日)の夜には、社務所の広間に神職や氏子のみなさんが集まって「百味の御食」を調製する「御供(ごく)盛り」が行われます。その際に、垂木づくりも行われました。


 餅は搗(つ)いてから3日ほどのものが加工しやすいので、それを見越して用意しておきます。垂木には数種類があり、そのうち花弁のように見えるのは、薄く切った変形六角形の垂木。これは長いものと短いものがあります。他に、薄く切った二等辺三角形の小さな垂木や、短い円柱状の垂木があります。


 変形六角形の垂木は、赤・青・黄・黒の色に染めたものと、染めない白いものの5色をつくります。一枚一枚、染料を塗って色づけします。


 変形六角形の垂木に色をつけたら、しっかり乾かします。このとき、端が少し反るように乾かしておきます。


 短い円柱状の垂木は、台に挿した芯に通して飾るので、中央にドリルで穴を開けておきます。

米御供の飾りつけ

 そして迎えた「御供盛り」最終日。それぞれの奉仕者が自宅などで調製してきた米御供を社務所に持ち寄り、飾りつけをします。

 氏子の上杉征子(せいこ)さんは、米御供を奉仕して約25年の大ベテラン。征子さんが調製する米御供は、まっすぐな円柱形に、たすき縞の模様(菱模様)がきっちりと美しく浮かび上がった、まさに芸術品。上杉家は先祖が談山神社の宮司を務めていたこともあり、祖父母やご主人の忍さん、息子さんも米御供づくりに奉仕してきたといいます。現在のたすき縞の模様は、上杉家が受け継いできた模様を、忍さんがアレンジしたもの。


「たすき掛けの線が交差するところが、編み目のように出たり入ったりするように工夫して、その中に赤い点が入っているの。この交差点のところが難しいので、間違えないように気をつけています」と征子さん。ここまで朝3時間、夕方3時間ほど作業して3~4日かかったそうで、美しくつくるコツを訊くと、「大きい米粒を選んでつくると、最後の上のほうは小さい米粒になりがちになので、そうしたら間隔をちょっと空けたりして調節しています」とのことでした。

 卍模様の米御供を前にしているのは、氏子の陶原泰代(すはら・やすよ)さん。陶原家は談山神社が寺院だった時代の塔頭(たっちゅう=僧房)だったことから、代々この模様の米御供を奉仕してきました。ちなみに、寺を表す卍模様と対になるよう、以前は赤で「神社」の文字を表した米御供もつくられていましたが、現在は見られなくなっています。


 泰代さんは陶原家に嫁いできてから毎年、米御供づくりに奉仕しているそう。「嫁いでくるまで嘉吉祭のことは知りませんでしたが、御供盛りは最初から『やりたい』と思いました。義父もやっていましたし、子供たちも小さい頃は一緒にやっていました。伝統あるものだから、残していきたいですね」と話します。ここまで3~4日間で計12時間ほどかかったそうで、「手が慣れるまで、卍模様のきりのいいところまで、3時間くらいは続けてやるようにしています。作業中は無心になって、ふだんとは違う特別な時間。こうして神社で近隣のみなさんと顔を合わせて、お話ししながら一緒に作業できるのも楽しいんです」と、征子さんと顔を見合わせます。

 各々が前にした米御供の本体の上に、垂木を順番に重ね、糊づけしていきます。


 二等辺三角形の小さな垂木の上に、変形六角形の長いほうの垂木を置き(上の写真左)、短い円柱状の垂木をのせます(上の写真右)。その後、変形六角形の垂木を短いものに変えて同じように垂木を置き、2段重ねにします。色とりどりの垂木が花びらのように放射状に広がり、米御供はいっそう華やかに彩られます。


 前回で登場した禰宜(ねぎ)の土居さんも、寝る間も惜しんで調製した米御供に、垂木を飾りつけます。その米御供を見て、征子さんが「模様の色を順に送っていくと面白いかも」と新たなアイデアを提案。「ちょっとゆがんじゃいました」という土居さんに、「押さえ木を横に押し当てるとまっすぐになるのよ」ともアドバイスしています。

 垂木を飾ったら、さらにピンク色の「みやましきび」の実をトッピングします。本来は近隣の山で採れた実を飾るのですが、最近は鹿に食べられてしまって採れないので、買ってきたものを使っているそう。みやましきびの実を並べたら、内側に色米を散らします。


 こうして目にもうるわしく飾りつけられた米御供が、4台並びました! まるでデコレーションケーキのようで、なんとも可愛らしい姿です。一粒一粒、お米を盛りつけて、こんなに美しくて面白いカタチをつくるなんて、いったい誰が考えたのでしょうか。このような神饌が昔から伝わっているなんて、驚きです。

 米御供の他にも、「百味の御食」にはさまざまな独創的な神饌があります。次回以降も引き続き紹介していきますので、お楽しみに。


[取材・文/中尾千穂]

前回は↓
https://www.nihonbunka.or.jp/column/koushitsu/detail/100948
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