皇室WEB
前回、皇居には一般の神社に相当する宮中三殿があると書きました。「三殿」という名称が示しているように、３つの殿舎で構成されています。「賢所（かしこどころ）」と「皇霊殿（こうれいでん）」「神殿」です。
中央にあるのが賢所で、皇祖（こうそ）・天照大御神（あまてらすおおみかみ）がお祀りされています。その西（向かって左）にあるのが皇霊殿で、歴代天皇はじめ皇族などの御霊（みたま）がお祀りされています。そして、東（向かって右）に建てられているのが神殿で、天神地祇八百万神（てんじんちぎやおよろずのかみ）がお祀りされているのです。
天皇陛下は、日々、ご祖先と神々に感謝され、広く世の中の平安をお祈りされていますが、その宮中祭祀のほとんどが行われているところが、この宮中三殿なのです。
前回、皇居で行われる主な恒例祭祀の一覧をあげておきましたが、ここで、それぞれの内容を簡単に記しておきます。
まずは１月からです。
●１月１日／四方拝（しほうはい） 歳旦祭（さいたんさい） ３日／元始祭（げんしさい） ４日／奏事始（そうじはじめ） ７日／昭和天皇祭 30日／孝明天皇例祭（こうめいてんのうれいさい）
天皇陛下は元旦からお忙しい時を過ごされます。なんとその時刻は夜明け前の午前５時半、黄櫨染御袍（こうろぜんのごほう）というご祭服を身に着けられた天皇陛下は、宮中三殿に隣接する神嘉殿（しんかでん）の前庭にお出ましになられます。黄櫨染御袍は、平安初期の嵯峨天皇の時に天皇陛下がお召しになるご祭服と定められたものです。
陛下がお着きになる御座（ぎょざ）の前方には２基の燈台が置かれ、そこは四季が描かれた２双の屏風で囲まれています。庭燎（ていりょう）が揺らめく中、陛下はその座に着かれ、まずは伊勢の神宮、次に山陵及び四方の神々を遥拝され、世の中の平安を祈られるのです。
この四方拝に続いて臨まれるのが歳旦祭です。天皇陛下は、賢所の内陣（ないじん）の御座に進まれ、御玉串（おんたまぐし）を捧げられて拝礼され、国家国民の加護を祈念されます。
３日の元始祭は、年始にあたって皇位の大本と由来とを祝し、国家国民の繁栄を三殿で祈られる祭典です。４日の奏事始は祭祀ではありませんが、年始にあたり、皇室祭祀に関わる掌典長（しょうてんちょう）が、陛下に伊勢の神宮のことを奏し、皇室祭祀に関して申し上げる儀式です。
７日の昭和天皇祭は、昭和天皇の崩御日に皇霊殿と陵所（りょうしょ）で行われる祭典で、夜には皇霊殿で御神楽（みかぐら）があります。30日の孝明天皇例祭は、孝明天皇の崩御日に皇霊殿と陵所で行われる祭典です。
●2月17日／祈年祭（きねんさい） ２月23日／天長祭（てんちょうさい）３月春分の日／春季皇霊祭・春季神殿祭 ４月３日／神武天皇祭（じんむてんのうさい） ６月16日／香淳皇后例祭（こうじゅんこうごうれいさい） ６月30日／節折（よおり）の儀、大祓（おおはらい）の儀
２月の祈年祭は、三殿で行われる年穀豊穣祈願の祭典です。天長祭は、天皇陛下のお誕生日を祝し、国家および皇室の安泰を祈念する祭典です。３月の春季皇霊祭と春季神殿祭は、春分の日に行われるご先祖祭と神恩感謝の祭典です。神武天皇祭と香淳皇后例祭についての説明は不要でしょう。
６月の節折の儀は、天皇陛下のために宮殿で行われるお祓いの行事で、知らぬうちに犯した罪や穢れを祓う祭祀です。陛下のお体の寸法に合わせて竹の節を折るところから「節折」と称されます。大祓の儀は、神嘉殿の前で皇族をはじめ国民のために行われるお祓いの行事です。
●７月30日／明治天皇例祭 ９月秋分の日／秋季皇霊祭・秋季神殿祭 10月17日／神嘗祭（かんなめさい）賢所の儀 11月22日／鎮魂（ちんこん）の儀 11月23日／新嘗祭（にいなめさい） 12月中旬／賢所御神楽 12月25日／大正天皇例祭 12月31日／節折の儀、大祓の儀 除夜祭
10月の神嘗祭賢所の儀は、賢所に新穀をお供えになる神恩感謝の祭典で、この朝、天皇陛下は神嘉殿において伊勢の神宮を遙拝されます。11月の鎮魂の儀は、新嘗祭に先立って行われる「みたましずめ」で、魂を体に鎮め活力を取り戻す儀式です。11月の新嘗祭は、神嘉殿において新穀を皇祖はじめ神々にお供えになって神恩を感謝された後、陛下自らもお召し上がりになる祭典です。恒例祭典の中で最も重要なものになりますので、回を改めて説明します。12月中旬の賢所御神楽は賢所前庭の神楽舎（かぐらしゃ）で夕刻から御神楽を奉奏して神霊をなごめる祭典です。除夜祭は大晦日の夜に、この1年の神恩に感謝し、来る年の神助を祈念する祭儀です。
いかがでしょう。こういった祭祀を陛下は毎年、丁寧に繰り返し、世の中の平安を祈っていらっしゃるのです。
第４回（前回）はこちら https://nihonbunka.or.jp/column/koushitsu/detail/100736
第３回 https://nihonbunka.or.jp/column/koushitsu/detail/100715
第２回 https://nihonbunka.or.jp/column/koushitsu/detail/100714
第1回 https://nihonbunka.or.jp/column/koushitsu/detail/100713
