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連載 方言「知らんけどね」

第28回「だれっちゃ なんちゃ どこっちゃ」伊予弁
令和8年6月25日


第28回「だれっちゃ なんちゃ どこっちゃ」伊予弁 

 第24回で「だればり」「なにばり」「どこばり」「いつばり」「どればり」という「疑問詞+ばり」を紹介しました。この「~ばり」は「めったに~ない」という意味を表していて、たとえば「こんなこと、だればりに言えんわ~」なら「こんなこと、めったな人には言えないわ~」、「こんな機会はいつばりない思て、がんばった」なら「こんな機会はめったにないと思って、がんばった」となります。

 今回は「だれっちゃ」「なんちゃ」「どこっちゃ」と、前回より疑問詞の数は減るのですが、「疑問詞+ちゃ」です。もしかすると「どれっちゃ」もあるのかもしれませんが、あまり聞いたことがないので、今回は入れないことにしました。
 語尾に「ちゃ」をつける話し方で有名なのは、1980年代に一大ムーブとなった高橋留美子の超ヒット漫画『うる星やつら』の主人公、ラムちゃんの「~ちゃ」「~だっちゃ」でしょうか。これは高橋留美子の故郷、仙台の方言がベースになっているようで、意味は「~です」「~だ」という肯定ですね。佐渡などでも同じ意味で使われているようですし、九州でも「そうっちゃ=そうだよ」と使うみたいです。
 でも伊予弁の「疑問詞+ちゃ」はその反対で、これは必ず否定語を伴い、強い否定を表します。全否定です。といっても怒ったように強く言うわけではありません。むしろ軽く、さらりと言う場面の方が多いかもしれません。

「だれっちゃ」の使い方――時間通りに集合場所に行ったのに……。
 行った人「あれ、時間通りに来たのに、だれっちゃおらん…。」(一人もいない)

「なんちゃ」の使い方①——なにかの準備をしている場面で。
 お客さん「忙しそうやねえ。なんか手伝おか?」
 主催者「いやいや、なんちゃせんでもええよ。座っとって」

「なんちゃ」の使い方②——一所懸命に準備したのに、行事そのものがなくなったりして報われなかったとき。
 準備した人「あんなにがんばったのに、なんちゃならんかった」(何にもならなかった)

「どこっちゃ」の使い方――親が幼い子供に言い聞かせていいます。
親「ちょっとここで待っとって。どこっちゃ行ったらいかんよ」(どこにも行ったらダメよ)
子ども「わかった。どこっちゃ行かん」

 「どこっちゃ」の例文の場合、「どこっちゃ」の代わりに「どこばり」も使えます。最初にも書いたように、「~ばり」は「めったに~ない」という意味なので、「めったなところに行ったらダメだよ」という意味になりますからね。
 でも「どこばり」だと、ちょっと否定の度合いが弱まってしまうんです。基本的にそこから動いてはいけないけど、数メートル以内なら許されるみたいな。しかし、「どこっちゃ」になると、そこから一歩も動いてはいけないというイメージがあります(私の場合ですが)。
 このあたりのニュアンスの違いは、そこで長く暮らした人でないとわかりませんよね。方言の面白いところですね。
文/おかだなおこ
前回はこちら https://www.nihonbunka.or.jp/column/yomimono/detail/100875
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