講師:國學院大學教授 茂木貞純 先生
3. お米がつくった日本人 ―その1―
お米を作らなければ飢(う)えてしまい、生きてゆけません。昔は毎日食べるものはお米の他には、ほとんどありませんでしたから、お米が一番大切でした。だからお米がたくさんとれるよう、昔の人はいっしょうけんめい努力してきたのです。そうして長い間ずっとお米を作りつづけてきた結果、しぜんと私たち日本人の性格が育てられてきたのでしょう。
日本人の特徴(とくちょう)は、たくさんありますが、今日は大きく分けて6つ話します。
1つ目は、働き者であることです。
稲作りには草取りをはじめ、たくさんの手間がかかります。「米作りには88の手間がかかる」という言葉もありますが、それだけ手間をかけるところから、働き者という性格が生まれてきたのでしょう。
2つ目は、人と仲良くすることを大事にしたということです。
お米を作るためには水が必要ですが、この水を田んぼへ引くためには水路が必要です。田んぼにはられる水は川などから流れて来る水ですが、その水を川から田んぼまで引くためには水路を作らなければなりません。水路は大勢の大人が何人も集まって、土を運んだり穴をほったりしなければ作ることができません。そこから、みんなで仲良くするという性格、「協調性(きょうちょうせい)」が生まれました。
3つ目の特徴もまた、水路作りから生まれました。
水路を作るために算数(数学)が発達したのです。日本独自の算数を「和算(わさん)」と言いますが、昔の人はその和算の難しい問題を解き、それらの問題と解いた答えを書いた額を神社に奉納(ほうのう)しました。その額は今でも全国のたくさんの神社に残っています。